
スポーツの現場では「選手のために」という言葉をよく耳にします。
選手のためにとは何をすることなのでしょうか。
このヒントとなるのがプレーヤーズセンタードという考え方です。
今回はBottwusでも採用しているプレーヤーズセンタードに関して、解説します。
プレーヤーズファーストではない考え方
プレーヤーズファーストという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
選手を第一に考え、優先する。
おそらくそんなイメージを持っている方も多いと思います。
このプレーヤーズファーストという言葉は、指導者の強権的な指導に対する反論としての側面が強くあります。かつては指導者が上で、選手は指導者のいうとおりにする存在。プレーヤーはコーチに競技を教わる側。そこでは純朴さや素直さが求められました。そのようなあたり前があった社会で、プレーヤーズファーストという考え方は育ってきました。プレーするのは選手なんだから、選手の考えていること、やりたいことを優先しようよ。そんな指導論です。実際「ファースト」には、選手の言うことを最優先にする、あるいは選手を特別扱いするというニュアンスが混入しやすい。
ただこれは、長い目で見ると選手の成長を阻むことがあります。
コーチが選手に従うだけでは、コーチとしてのプロの判断が消えてしまったり、選手が自分自身の考えの幅を広げる機会が失われてしまうことにも繋がります。
そこで出てきた考え方がプレーヤーズセンタードというもの。
選手を「中心」に据えながらも、その周囲に広がる人たちとの関係性を大切にする。家族、チームメイト、トレーナー、そしてメンタルコーチも含めた全員が、選手を中心とした円の中にいる。この周囲の人たちをアントラージュ(entourage)といいます。プレーヤーズセンタードとは、アントラージュも含めた円全体を動かしていくという考え方です。
選手と周囲がポジティブなスパイラルをつくる
アントラージュの存在が重要なのは、関わる全員が互いに影響を与え合うからです。
コーチが成長すれば、選手に与える示唆の質が上がる。選手が変化すれば、コーチの見方も深まる。親や仲間のサポートが安定すれば、選手は安心して挑戦できる。
この連鎖がうまく回り始めると、ポジティブなスパイラルが生まれます。誰か一人が頑張るのではなく、みんながつながりながら少しずつ上に向かっていく。これがプレーヤーズセンタードの核心です。
Bottwusが目指しているのも、まさにここです。
選手一人の「メンタルを強化する」のではなく、選手を取り巻く環境ごと、少しずつ良い方向へ動かしていくこと。
自立と尊重、コーチとの関係性

プレーヤーズセンタードは、コーチと選手の関係はお互いに自立を基本として成り立っています。
選手はプレーをするということにコミットし、指導者は指導をすることにコミットします。共通の目標に対して、お互いがお互いの役割に責任を持ち、主体性を持って取り組む。ここにはお互いが自分自身のことを自分で決めるという過程が必要です。だからこそコーチの仕事は、選手が自分自身の心の動きを観察し、自分でハンドルを握れるようになること。Bottwusのコーチングもここを目指しています。
そしてもう一つ、この関係に欠かせないのが互いへの尊重です。選手の価値観、競技への姿勢、これまで積み上げてきたもの——それをコーチとして全力で尊重する。同時に、コーチとしての専門性や判断も、選手に尊重してもらえる関係をつくっていく。
対等であることと、役割があること。この二つは矛盾しません。尊重が土台にあるとき、はじめてフィードバックが届き、提案が動力になり、選手の意思決定に力強さが増す。そうしてポジティブなスパイラルが回り始めます。
選手の文脈に応じたコーチング
例えば「緊張」という課題を持った選手が二人いたとします。その二人が感じている緊張というのは同じものでしょうか?もしかすると一人は大会前日、明日の試合では準備してきたことをやってやるぞという緊張があるかもしれません。一方でもう一人はチームメイトとの関係からくるストレスで緊張を感じているかもしれません。もしそうであれば、同じ緊張でも対処する方法というのは異なります。
また人が違えば、これまで経験してきたことも全く違います。今この瞬間、何をするかという判断は、これまでのその人の人生経験からくるものであり、全く同じ人などいないのです。
だからこそ、プレーヤーセンタードのアプローチでは、選手の置かれた文脈や環境を丁寧に把握することが出発点です。どんな状況で、何を感じていて、何を大切にしているのか 。そして、それはどうしてなのか。耳を傾け、理解し、選手と共に吟味し、次の戦略を練る。
その文脈の中で「今、この選手に必要な一歩」を一緒に考えていく。大きな変化を一気に起こそうとするのではなく、一歩ずつ進む。アスリートの成長は、劇的な瞬間よりも、積み重ねた小さな変化の上に成り立っています。
選手と共に、コーチも成長する
コーチは教える側、選手は学ぶ側。かつてはこのような考え方がありました。
あらゆる情報がインターネットを介してやり取りされる社会において、このようなアプローチは効果的ではありません。単なる情報を受け渡すだけなら、コーチは必要ないのです。
より重要なことは、コーチも一人の当事者として関わること。競技の現場で何が起きているか、選手がどんな文脈の中でプレーしているか。それを丁寧に聞き、理解しようとするプロセスの中で、コーチングの眼も磨かれていきます。目の前のアスリートと積み重ねた時間が、コーチングを通して還元されていく。まさにこれが成長のスパイラルを産むと信じています。
だからこそ、メンタルコーチとしての研鑽を怠らない。新しい知識や技術を学び続け、より良い問いを持って選手と向き合う。選手と共に成長するコーチであること。これがBottwusが大切にしているプロフェッショナリズムです。
プレーヤーズセンタード。それは選手を甘やかすことでも、選手の言いなりになることでもありません。
それは選手を中心に、関わる全員が共に育っていくプロセスです。
時には一緒になって一番厳しい道を歩む瞬間もあります。
時には選手に寄り添い、その背中を支えることもあるでしょう。
しんどい時も嬉しい時も、選手と共に進んでいく。
我々はそんなコーチでいたいと思っています。
Bottwusのコーチングに興味をお持ちの方は、ぜひ一度ご連絡ください。

